Chapter.13 「好きになってしまった」と伝えた夜

「好きになってしまった」と伝えた夜 未分類

サービスが終わったあと、私たちはベッドに寝転びながら、しばらく別の話をしていました。

その日、私は彼女に気持ちを伝えようと決めていたわけではありません。それでも会話を続けているうちに、今しか言えないような気がしました。

「言ってしまっていいのかわからないけど、好きになってしまったわ~」

重くなりすぎないよう、少し柔らかい言い方を選びました。

彼女は驚いた様子を見せるでもなく、

「あ~、好きになっちゃったかぁ~」

と、彼女らしい調子で返しました。

そのあと、いくつか言葉を交わしました。正確なやり取りはもう覚えていませんが、恋愛として踏み込むのではなく、推し活のような感覚で応援してもらえる関係がいい。そんなニュアンスのことを言っていたように記憶しています。

冗談を交えながら、恋愛関係には踏み込まないという線をやんわりと示してくれたのでしょう。

彼女はこの仕事をする中で、これまでにも客から強い好意を向けられた経験がありました。一方で、自分は色恋に頼った接客はせず、どちらかといえばドライな方だとも話していました。

私が会いに行っていた頻度を考えれば、気持ちを言葉にする前から、彼女も私の好意や依存に近い状態に気づいていた可能性はあります。だからこそ、あの言葉にも大きく驚かなかったのかもしれません。

彼女が私の状態をどのように受けとめていたのか、本当のところは分かりません。

ただ、私はその返事を聞いても、ショックを受けませんでした。

彼女が同じ気持ちを返してくれるとは、もともと考えていなかったからです。軽くかわされることも、どこかで想像していました。

気持ちを伝えたあとも、彼女との間に急な距離ができたようには感じませんでした。

彼女には、私に家庭があることを伝えていました。彼女は私について、「私の家庭や彼女自身の生活を壊すようなことはせず、越えてはいけない線を守る人に見える」という趣旨のことを話していました。

その言葉から考えると、私が好意を伝えても、関係を無理に変えようとはしないと受けとめていたのかもしれません。

当時の私は、気持ちを隠し続けることに耐えられなくなっていました。

彼女を思うことで苦しくなり、その気持ちを言葉にすれば、少しは楽になれるのではないか。そんな自分本位な思いもあったのでしょう。

好きだと伝えることは、正直である一方、その気持ちを受け取る負担を相手に渡すことでもあります。私は自分の苦しさを軽くするために、彼女に受けとめてもらおうとしていたのかもしれません。

彼女から色恋を仕掛けられたわけではありません。それでも、なぜか私は彼女に深くはまっていきました。

今振り返ると、彼女が恋愛関係には踏み込まないという線を引いてくれたことは、とても大きかったです。

もし彼女も恋愛として私の気持ちに応えていたら、お互いに止まれなくなっていたかもしれません。その先で生活がどうなっていたのかは、想像もつきません。

どこかで私は、「彼女はプロだから、越えてはいけないところは分かっている」と、彼女の判断に頼っていたのでしょう。

自分から気持ちを伝えておきながら、最後の歯止めは彼女に任せる。そこには、私のずるさもありました。

あの夜、彼女は私の気持ちを否定しませんでした。

けれど、受け入れすぎることもありませんでした。

その柔らかな線引きが、結果として私の生活まで守ってくれていたのだと、今では感謝しています。

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