二人で同じ資格の勉強を続けていた頃、私たちの間には、もう一つ小さくない変化がありました。
それまでも、保護のある形での触れ合いはありました。ただ、その保護をなくすことは、彼女が受け入れていなかった一線でした。
それ以前にも、私は何度かその一線に近づこうとしました。しかし、そのたびに彼女はうまくかわしていました。
今思えば、何度も近づこうとしたこと自体が負担だったかもしれません。
言葉ではっきり断られなくても、何度もかわしていたこと自体が、彼女なりの意思表示だったのだと思います。
ところが、その日はいつものようにかわす素振りがなく、自然な流れの中で、肌を隔てるもののない触れ合いを初めて受け入れてくれたのだと、当時の私は受けとめました。
何か特別な言葉を交わしたわけではありません。彼女の方から積極的に求めてくれたわけでもありません。
それでも当時の私は、受け入れてくれたことが素直に嬉しかったのです。
それは単に、望んでいたことができたという嬉しさだけではありませんでした。
それまで二人の間にあった境界を、初めて越えたように感じました。彼女が守っていた一線の内側へ、少しだけ入れてもらえたような感覚でした。
もちろん、それが彼女からの好意だったとは限りません。
仕事として受け入れただけかもしれませんし、何度かその一線に近づこうとする私を見て、かわし続けることを諦めただけだったのかもしれません。
それでも私は、そのとき彼女が受け入れてくれたことを、軽いものとして扱いたくありませんでした。
そこには、受け入れてくれたことへの感謝もありました。その出来事を大切に受けとめ、自分なりの優しさで包み返したい。
うまく言葉にはできませんが、そのような感覚がありました。
この出来事を境に、彼女に対する気持ちにも少し変化があったように思います。
まだ、自分の気持ちをはっきりと「好き」だと認めていたわけではありません。話していて楽しく、見た目もすごく好みで、努力する姿を応援したい女性。その気持ちは、それまでと変わりませんでした。
ただ、そこに「愛おしい」という感覚が少しずつ加わっていました。
彼女が私をどう思っていたのかは分かりません。
それでも私は、身体の距離が近づいたことで、心の距離まで近づいたように感じ始めていたのだと思います。
今振り返れば、それは私の側から見た感覚にすぎなかったでしょう。
けれど、この日に越えた一線は、その場だけで終わるものではありませんでした。
それまで曖昧だった彼女への気持ちは、少しずつ形を持ち始めていました。

