Chapter.6 初めて越えた、二人の境界

初めて越えた、二人の境界 未分類

二人で同じ資格の勉強を続けていた頃、私たちの間には、もう一つ小さくない変化がありました。

それまでも、保護のある形での触れ合いはありました。ただ、その保護をなくすことは、彼女が受け入れていなかった一線でした。

それ以前にも、私は何度かその一線に近づこうとしました。しかし、そのたびに彼女はうまくかわしていました。

今思えば、何度も近づこうとしたこと自体が負担だったかもしれません。

言葉ではっきり断られなくても、何度もかわしていたこと自体が、彼女なりの意思表示だったのだと思います。

ところが、その日はいつものようにかわす素振りがなく、自然な流れの中で、肌を隔てるもののない触れ合いを初めて受け入れてくれたのだと、当時の私は受けとめました。

何か特別な言葉を交わしたわけではありません。彼女の方から積極的に求めてくれたわけでもありません。

それでも当時の私は、受け入れてくれたことが素直に嬉しかったのです。

それは単に、望んでいたことができたという嬉しさだけではありませんでした。

それまで二人の間にあった境界を、初めて越えたように感じました。彼女が守っていた一線の内側へ、少しだけ入れてもらえたような感覚でした。

もちろん、それが彼女からの好意だったとは限りません。

仕事として受け入れただけかもしれませんし、何度かその一線に近づこうとする私を見て、かわし続けることを諦めただけだったのかもしれません。

それでも私は、そのとき彼女が受け入れてくれたことを、軽いものとして扱いたくありませんでした。

そこには、受け入れてくれたことへの感謝もありました。その出来事を大切に受けとめ、自分なりの優しさで包み返したい。

うまく言葉にはできませんが、そのような感覚がありました。

この出来事を境に、彼女に対する気持ちにも少し変化があったように思います。

まだ、自分の気持ちをはっきりと「好き」だと認めていたわけではありません。話していて楽しく、見た目もすごく好みで、努力する姿を応援したい女性。その気持ちは、それまでと変わりませんでした。

ただ、そこに「愛おしい」という感覚が少しずつ加わっていました。

彼女が私をどう思っていたのかは分かりません。

それでも私は、身体の距離が近づいたことで、心の距離まで近づいたように感じ始めていたのだと思います。

今振り返れば、それは私の側から見た感覚にすぎなかったでしょう。

けれど、この日に越えた一線は、その場だけで終わるものではありませんでした。

それまで曖昧だった彼女への気持ちは、少しずつ形を持ち始めていました。

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